ストルバイト結石は海外では 「infection stones (感染結石)」 と呼ばれるほど、細菌の感染により引き起こされる確率が高い疾患です。
ストルバイト結石は通常内科療法で治療することができる結石です。
ですが、治療方法を誤るとなかなか治らなかったり、再発してしまう可能性が高くなります。
この記事では早期に結石を治療するため、そして再発を防ぐための知識をお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
この記事を読めばもうストルバイト結石で悩むことはなくなりますよ!
ストルバイト結石の原因
ストルバイト結石は海外では infection stones (感染結石) ともいわれます。
これはストルバイト結石のほとんどが外から侵入した細菌 (主に大腸菌) に感染することで引き起こされるためです。
特に犬の場合、ストルバイト結石の原因のほとんどは尿路からの感染によるもので、食事が原因で引き起こされることはよほど極端な食事をしていない限りほとんどありません。
ストルバイト結石はメス犬に多くみられ、いくつかの研究ではストラバイト結石を発症する犬のうち、最大で85%は女の子であるともいわれています。
それは下記の図からわかるように、メス犬の尿道はオス犬に比べて短くて太いため、細菌は尿道を通りやすく、膀胱までたどりつきやすいためです。
オス犬の尿道は細くて曲がっているため、細菌が外から侵入しても膀胱までたどりつきにくいです。
通常、膀胱の尿は無菌です。
しかし細菌は膀胱にたどりつくと増殖をして尿路感染症を引き起こし、結石を形成します。
ストルバイト結石はどのようにして形成されるの?
ストルバイト結石はリン酸アンモニウム・マグネシウム結石とも呼ばれます。
なぜならストルバイト結石はリンとマグネシウムとアンモニアから形成される結石だからです。
尿には体内の代謝により分解された老廃物 (マグネシウムやリン等) が含まれています。
そして尿中の老廃物は尿が弱酸性 (pH6.5くらい) を保っている限り分解されたまま排出されます。
ですが尿路から細菌であるブドウ球菌が侵入すると、細菌は尿素をアンモニアに分解します。
そして尿中の老廃物 (マグネシウムとリン) がアンモニアと混ざることにより、ストルバイトと呼ばれる化合物が生成されます。
細菌は尿素をアルカリに分解すると同時に、アルカリ性の尿も生成するため、尿はアルカリ性に傾きます。
通常、尿は弱酸性であれば問題ありませんが、アルカリ性に傾くことでストルバイトは結晶化して、結石が形成されます。
また、尿中のアンモニアは膀胱炎も引き起こします。
ストルバイト結石の症状
ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の症状は似ています。
血尿と排尿障害がもっとも見られる症状です。
血尿は結石が膀胱の壁を傷つけ出血するために起こります。
排尿障害は結石が膀胱から尿道への入り口を部分的にふさいだり、尿道をふさいだりするために起こります。
また、頻尿になるのは尿が膀胱にたまっているためと、結石が膀胱や尿道を刺激するためです。
ストルバイト結石の症状
- 尿に血が混じる(血尿)
- 頻尿だが尿量が少ない
- 排泄時に痛がる
- 尿が濁っている
- 尿がくさい
- 落ち着きがない
- 失禁
- 発熱
ストルバイト結石の検査方法
膀胱に結石があるかないかは触診でわかる場合もあります。
ですが通常はレントゲンあるいは超音波検査と尿検査により診断されます。
レントゲンや超音波検査では結石の有無を調べることはできますが、結石の種類まではわかりません。
そのため尿検査もおこない結石の種類を判定します。
レントゲンで膀胱内に結石が見うけられ、尿検査の結果がアルカリ性を示した場合、ストルバイト結石と診断されます。
結石の種類を診断することは治療をおこなう上でとても重要となります。
そのため結石の種類もしっかりと診断してもらうことが大切です。
ストルバイト結石の治療方法
ストルバイト結石は通常内科療法で排除することができる結石です。
内科療法では抗菌薬と療養食の摂取がメインとなります。
ストルバイト結石の原因は外から侵入した細菌なので、この細菌を抗菌薬で殺し排除します。
そして、多くの場合同時に療法食を取ることが推奨されています。
しかし、実際は療法食を取らなくても抗菌薬を摂取するだけでストルバイト結石は完治することができます。
抗菌薬だけで排除することができるといっても、細菌をできるだけ早く外に出すように尿量を増やすことは大切です。
そのため尿量を増やす食事が推奨されます。
尿量を増やすためにはウエットフードが推奨されます。
尿石用に販売されているフードを使用する場合は長期で摂取することは避けるべきです。
ここでは抗菌薬を摂取する場合の注意事項や療法食を摂取する場合の注意事項等に関してお伝えいたします。
ストルバイト結石の治療方法1 |抗菌薬(抗生物質)を摂取する
ストルバイト結石は主に細菌感染により引き起こされます。
そのため抗菌薬を摂取して体内にいる細菌を除去する必要があります。
細菌は結石内にはびこっているので、抗菌薬を摂取して結石が溶解すると細菌が膀胱内に放出されます。
放出された細菌が再度結石を形成することを防ぐためには、尿量を増やしてすみやかに外に排泄することが大切です。
抗菌薬は結石が膀胱内にある限り服用する必要があります。
抗菌薬(抗生物質)の使用は最小限に抑えることが重要
抗生物質の服用は胃腸を痛める可能性があります。
また抗生物質に対する耐性菌が体内にできてしまい、その他の治療で抗生物質を使用しても効きにくくなる可能性もあります。
つまり抗生物質を長期で使用すると肺炎などの他の感染病を治療することが難しくなる可能性があるということです。
そのため抗生物質の使用は最小限にすることが大切です。
ですが、ストルバイト結石では細菌が膀胱内に残っている状態で抗生物質の摂取を中止してしまうと、再発の可能性が高くなるため、長期の服用となる場合もあります。
ストルバイト結石の早期改善と予防におすすめの健康食品 | クランベリー
薬の量を少しでも減らし、早期改善を目指すためにおすすめしたいのがクランベリーの摂取です。
クランベリーには、アルカリ性に傾いてしまった尿のpH値を下げ弱酸性にする効果があるといわれています。
通常、犬の尿は弱酸性(pH6.5くらい)ですが、ストルバイト結石ではアルカリ性に傾くことにより細菌が活動しやすい環境となるため増殖し結石ができます。
抗菌薬を服用して最近を排除しストルバイト結石を溶かすのと同時に、クランベリーを摂取することにより早期に尿のpH値を通常の弱酸性へと戻すことができれば、細菌が活動しにくい環境を作ることができるため早期改善が見込めます。
また、クランベリーの高い抗酸化力は細菌が体内にとどまることを防ぐ効果があるといわれています。
クランベリーだけですでにできてしまったストルバイト結石を溶かすまでの効果はありませんが、治療の早期改善と再発防止に高い効果が期待できます。
下記の商品「クラニマルズ オリジナル」はオーガニック・クランベリーのみから作られているワンちゃん用のサプリメントです。
ストルバイト結石の治療方法2 | 療養食の摂取
ストルバイト結石の内科療法では、疾患の原因となる細菌や老廃物がすみやかに体外へと排出できるようにすることが大切です。
体内の細菌や老廃物は尿と一緒に排出されます。
そのため、細菌や老廃物をすみやかに体外へ排出するには尿量を増やしてあげる必要があります。
尿量を増やすためにはウエットフードが推奨されます。
尿石用の療法食で塩分を添加しているものは避けるべき
ストルバイト結石の療養食は犬が水を多く飲むように、塩分 (ナトリウム) を多く含んでいるものがあります。
これは、塩分により喉の乾きをうながし、水をたくさん飲むようにするためです。
しかし、水をたくさん飲むことで尿量が増えるという理屈には疑問があります。
みなさんは尿量を増やすために塩分を多く取ろうという考えにいたるでしょうか?
実はその反対で、塩分を摂取するとむくみやすくなる、つまり水分を体内にため込んでしまうから避けるということが多いのではないでしょうか。
塩分 (ナトリウム) を多く摂取するとむくみやすくなるのはなぜでしょうか?
ナトリウム (塩) には体内の水分量を決める作用があります。
塩分を摂取すると脳は喉の渇きを起こして水分を摂取するように働きかけます。
しかし同時に脳は尿量を減らすようにも指令を出します。(抗利尿ホルモンという尿量を減らすホルモンを分泌します。)
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これは尿量を減らして水分を外に逃がさないためです。
このようにして体内の水分量を増やすことで体内のナトリウムの濃度を正常に戻そうとするのです。
つまり、塩を摂取すると体内のナトリウム濃度が上がるのではなく、体内の水分量が増えるということです。
塩分を多く取ると身体がむくむというのはこのような作用があるからですね。
体には体内の塩分濃度を一定に保とうとする作用があります。
そのため、体内の塩分濃度が制限されていれば、しばらくすると水分はそのまま尿から排泄されます。
ですが塩分が体内に多いと水分を体内に保持してしまいます。
人間用の利尿薬には体内のナトリウムの排泄を促進させる利尿薬もあります。
これは心不全の治療にもちいられます。
ナトリウムが体内に蓄積し体内の水分量が増えると、心臓に帰る血液量も増加します。
心臓に帰る血液が増えるということは、心臓の負担が増えるということです。
その負担に耐え切れなくなると心不全が起こります。
そのため、心不全の治療にはナトリウムの排泄をうながす利尿薬がもちいられるのです。
こういった事実からも、尿量を増やす目的で塩分を多く添加しているドッグフードには疑問があるということが理解していただけると思います。
参考:よくわかる栄養学の基本としくみ | 中屋 豊著 | 秀和システム
参考:輸液の基礎知識 | 株式会社大塚製薬工場
参考:水だけ出す利尿薬とは何ですか。なぜそういう薬剤が必要なのですか | 公益財団法人日本心臓財団
参考:むくみの原因と対策を知ろう!【栄養だより2021年10月号】 | 日本調剤
尿石用の療養食は長期で摂取させることは避けるべき
それでは塩分を多くしていない他の療法食なら長期で摂取しても大丈夫なのかというと、残念ながらそれも注意が必要です。
尿路感染用の療養食は結石の形成を妨げるよう、カルシウム・マグネシウム・リンなどのミネラルが制限されています。
カルシウム・マグネシウム・リンは骨や歯の構成成分です。
もちろんこれらの成分の取りすぎもよくありませんが、大切なのはバランスです。
また、タンパク質も制限されているため長期に摂取させるのは避けたほうがよいです。
タンパク質は筋肉や血液・白血球など、体のさまざまな構成要素になります。
タンパク質を長期的に制限することは、筋肉量の低下や免疫力の低下などを引き起こし身体を弱らせる可能性があります。
その他、尿路感染用の療養食には塩分のほかに脂質が多く含まれている場合が多いです。
そのため、膵炎・腎不全・心臓病・高血圧の疾患がある場合には摂取させるべきではありません。
尿路結石用の療法食はできてしまったストルバイト結石を溶かす場合にのみ使用すべきで、予防のために長期的に与えることは避けるようにしましょう。
ストルバイト結石におすすめの療法食は?
ストラバイト結石のフードは水分を多く摂取できるウエットフードのほうが望ましいです。
細菌はおしっこといっしょに体外へ排泄されるため、水分を多くとり尿量を増やす必要があります。
一例として、ヒルズから販売されているストラバイト結石の療養食 「c/d マルチケア」のドッグフードとウエットフードの水分量を比較すると下記のようになります。
🍚ドッグフードとウエットフードの水分量比較
ドッグフード:約10 %
ウエットフード:約85 %
また、ウエットフードのほうが消化がよいのも良い点です。
ヒルズの尿石用の療法食は塩分を添加していないのでストルバイト結石の場合に安心して使用できます。
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内科療法の治療期間はどれくらいなの?
ストルバイト結石の治療期間は症状により異なります。
もし結石が小さくて感染を抑制することができれば、早ければ2週間ほどで治る場合もあります。
ですが平均では2~3ヶ月ほどかかります。
治療期間中は獣医師の判断により4~6週間ごとに尿検査やレントゲン検査が必要となる場合もあります。
ストルバイト結石(尿路感染症)の再発を予防するために
ストルバイト結石を含む尿路感染症を予防するための確実な方法は水分摂取量を増やすことです。
そして、細菌が膀胱にとどまらないようにするために、排尿を我慢させることはせずに、いつでも排尿をできるようにしてあげることです。
排尿を我慢させて細菌が膀胱にとどまる時間を長く与えてしまうということは、細菌に増殖する時間を与えてしまうということです。
細菌は増殖することで結石を形成します。
そのため、いつでもトイレに行ける環境を整えておく必要があります。
排泄は外でしかしないワンちゃんの場合は、水分量を増やした分ひんぱんにトイレに行く必要もでてくるため、飼い主さんの負担も大きくなります。
それでは困ってしまうので、屋内でトイレができるようにトイレトレーニングをしておくことが必要です。
下記の記事では成犬でもできるトイレトレーニングの方法をお伝えしていますのでぜひご参考ください。
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そして、散歩などの適切な運動もストルバイト結石の予防には必要です。
運動することで尿を出しやすくすることができます。
🦮ストルバイト結石の予防方法
- 水分摂取量を増やす
- トイレを我慢させない
- 適度な運動を欠かさない
下記の記事では犬の1日の適切な水分摂取量や水分摂取量を増やす方法などをご紹介していますので合わせてご参考ください。
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まとめ
ストルバイト結石はシュウ酸カルシウム結石に比べて治療しやすい結石です。
療法食を摂取する場合は必ず塩分を多く添加していないものを選ぶようにしてください。
そして治療が終わったらすみやかに通常のフードに戻すようにしましょう。
予防のために療法食を長期で摂取することは別の疾患を招くリスクを高めます。
どんな結石であれ、水をよく摂取させること、トイレを我慢させないこと、そして適度な運動が非常に大切です。
それが結石のリスクを避ける一番単純で確実な方法なので、犬の尿路結石で悩んでいる飼い主さんは、この3つを意識するようにしてくださいね。
参考: Struvite Bladder Stones In Dogs | VCA Animal Hospitals
参考: How to prevent Bladder Stone in dogs | Canine Care